ニッケル及びニッケルクロムメッキ
ニッケルはステンレス鋼、磁石鋼、白銅などの合金成分として広く用いられていますが、化学的に安定でさびにくいことからメッキ用としても重要な金属です。
電気ニッケルメッキ法が開発されたのは1830年代であり、わが国では1892年に初めてニッケルメッキが行われたといいます。初期のニッケルメッキは無光沢であり、メッキ後研磨して光沢を出していました。
1950年代に光沢剤が開発され、光沢ニッケルメッキが可能になると、その使用量は飛躍的に増加しました。
黒色ニッケルメッキ
特徴
金属イオンとしてニッケルのほか亜鉛を含有することです。
通常のニッケルメッキにおいて、微量の亜鉛が不純物としてメッキ浴に蓄積すると低電流部が黒色になるトラブルが発生しますが、このメッキはこの現象を利用したものといえます。
メッキ浴に添力日した亜鉛はメッキ皮膜に共析するため、このメッキは厳密にはニックル・亜鉛合金メッキです。
このメッキ皮膜自身には光沢性はなく、もろいため、メッキ厚は2μm以上の厚付けはできません。
このため、下地に一般的なニッケルメッキを施す必要があり、さらに最終仕上げとしてラッカー塗装をすることもあります。
用途・機能
用途
黒色ニッケルメッキ浴は装飾用のほか、太陽光選択吸収膜用として利用されることもあります。
光学機器分野・・自動車部品・カメラ等
装飾分野・・眼鏡フレーム・各種金具・カメラ・装身具等
機能
対摩耗性、硬度、寸法精度、反射防止性
利用設備・機器
陽極
陽極用として市販されている金属ニッケルには、電解ニッケル、カーボナイズド・ニッケル(スライム発生防止のために微量の炭素とけい素を添加)、サルファ・ニッケル(不動態化防止のために微量の硫黄を添加)、デポライズド・ニッケル(円滑な溶解のためにNiOを添加)のなどがあります。
一般的には電解ニックルで良いですが、高電流作業をする場合などにはそれ以外のものを用います。
陽極の形状としては、板状のものを用いても良いですが、一般的には小片にしたものをチタン製のバスケットに入れて用いることが多いです。
陽極は電解によリスライムと呼ばれる溶解残渣を発生させ、これが品物に付着するとザラになります。
これを防ぐために布製のアノード・バッグを陽極に装着することが一般に行われています。
撹拌
高電流部においては陰極界面のニッケルイオンの消耗が大きく、ニッケルイオンの供給が十分に行われないと水の電気分解が起こり、水素ガスが発生してしまいます。
このとき、陰極界面のpHが上昇しニッケルの水酸化物が生じて陰極面に析出しますが、これがコゲです。
コゲの発生を防止するためにはメッキ浴の撹拌を行い、陰極界面ヘニッケルイオンを十分に供給する必要があります。
撹拌の方法としては、エア撹拌、液流動、品物の揺動などがありますが、ニッケルメッキの場合はエア撹拌が一般的です。
ただし、バレルメッキの場合はバレルの回転による品物の混合が撹拌となるため、エア境拌は必要ありません。
ろ過器
外部からメッキ浴に持ち込まれた固形微粒子がメッキ作業中に品物に付着するとザラになることがあります。
これを防ぐため、メッキ液をろ過器により連続的にろ過する必要があります。
また、光沢斉Jの分解生成物を除去するためにろ過機に活性炭を充填して連続ろ過を行うことも一般に行われています。
品質維持のための取組み
浴の作り方ワット浴の建浴手順は以下の通りです。
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浴の維持1. メッキ浴の分析硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ほう酸の基本3成分は化学分析により分析します。 分析とともに、ハルセルテストもメッキ浴管理には重要です。 |
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光沢ニッケルメッキ
特徴
装飾目的のメッキ処理です。
硬質クロムメッキではメッキ皮膜の優れた物理性質を各々の工業的要求を満たすために適用していますが、装飾用途ではわずか0.5μm以下の薄膜にもかかわらず強固な酸化皮膜を形成し、耐食性、耐変色性、耐候性など外観維持性能に優れていることから長い間広く利用されています。
用途・機能
用途
装飾用のメッキとして最も広く用いられています。
光沢ニッケルメッキ単層で用いられこともありますが、クロムメッキの下地用メッキとして用いられることも多いです。
機能
装飾性、耐食性、耐摩耗性、電導性、ボンディング性、ハンダ付け性
利用設備・機器
陽極
陽極用として市販されている金属ニッケルには、電解ニッケル、カーボナイズド・ニッケル(スライム発生防止のために微量の炭素とけい素を添加)、サルファ・ニッケル(不動態化防止のために微量の硫黄を添加)、デポライズド・ニッケル(円滑な溶解のためにNiOを添加)のなどがあります。
一般的には電解ニックルで良いですが、高電流作業をする場合などにはそれ以外のものを用います。
陽極の形状としては、板状のものを用いても良いですが、一般的には小片にしたものをチタン製のバスケットに入れて用いることが多いです。
陽極は電解によリスライムと呼ばれる溶解残渣を発生させ、これが品物に付着するとザラになります。
これを防ぐために布製のアノード・バッグを陽極に装着することが一般に行われています。
撹拌
高電流部においては陰極界面のニッケルイオンの消耗が大きく、ニッケルイオンの供給が十分に行われないと水の電気分解が起こり、水素ガスが発生してしまいます。
このとき、陰極界面のpHが上昇しニッケルの水酸化物が生じて陰極面に析出しますが、これがコゲです。
コゲの発生を防止するためにはメッキ浴の撹拌を行い、陰極界面ヘニッケルイオンを十分に供給する必要があります。
撹拌の方法としては、エア撹拌、液流動、品物の揺動などがありますが、ニッケルメッキの場合はエア撹拌が一般的です。
ただし、バレルメッキの場合はバレルの回転による品物の混合が撹拌となるため、エア境拌は必要ありません。
ろ過器
外部からメッキ浴に持ち込まれた固形微粒子がメッキ作業中に品物に付着するとザラになることがあります。
これを防ぐため、メッキ液をろ過器により連続的にろ過する必要があります。
また、光沢斉Jの分解生成物を除去するためにろ過機に活性炭を充填して連続ろ過を行うことも一般に行われています。
ニッケルクロムメッキ(3価)
特徴
化学薬品の環境負荷問題が大きくクローズアップされ、様々な金属あるいは化合物への規制が進みました。
それに伴い、6価クロムも有害性も指摘されメーカーサイドのグリーン調達の要請から使用を大きく制限する動きが強まっています。
このような背景から3価クロムめつき浴が1990年代中盤から注目されるようになり導入されるケースが多くなりました。
現在、数種類の3価クロムめつきプロセスが市販されており、代替6価クロムをめざした銀白色光沢の仕上りと独特な黒味(灰白色)を帯びた金属光沢外観となる2つのタイプが用意されています。
用途・機能
用途
表面を「ピカピカ」に仕上げたい製品。
ニッケルメッキよりも「耐食性」を向上させたい製品。
自動車部品、機械部品。
機能
装飾性、耐食性、耐摩耗性、硬度、抗菌性
品質維持のための取組み
3価クロムメッキ浴の成分構成
3価クロムメッキ浴は比較的単純な6価クロム浴と異なり、以下に示す多くの成分から構成されています。
- 金属クロム供給源
- メッキ浴を安定化させる錯化剤
- 導電性付与塩
- pH緩衝剤
- メッキ皮膜を改質させる湿潤剤
- その他の添加剤
3価クロムメッキ浴の特性
6価クロムメッキ浴との比較で以下のような特性が挙げられます。
- 付き廻り性、均一電着性が優れています。
- 高電流密度部分でのやけがほとんど発生しません。
- 6価クロム浴で見られるホワイトウォッシュの発生がありません。
- 6価クロムを使用しないため作業環境が改善されます。メッキ操作中のミスト発生も極めて少ないです。
- 浴中クロム濃度が低く、還元処理も不要のため廃水処理が容易です。
- 電流中断、整流器リップルの影響をほとんど受けず、湿潤状態では2重メッキしても外観、密着性に問題が生じません。
6価クロム浴は金属不純物に寛容で少量の混入では大きな影響を受けることはないですが、3価クロム浴ではわずかな銅、亜鉛、ニッケルなどの金属不純物がメッキ析出に悪影響を与えます。
前工程からの持ち込み、被メッキ品素材の溶解、銅ブスバー腐食生成物の液中への混入などを防ぐために細心の注意が必要となります。
また、3価クロム浴からのメッキでは6価クロム浴からのメッキ時に生成されるクロメート皮膜がほとんど形成されません。
したがって、メッキが付きまわっていない部分に対して何らかの防錆処理が必要になり、結果的に6価クロム品より耐食性が劣ると評価される一因になっています。
ここが広く普久させる大きな妨げになって
いる要因でもあり、この弱点を克服する後処理剤、プロセスの開発が今後の大きな課題といえます。
ニッケルクロムメッキ(6価)
特徴
装飾目的のメッキ処理です。
硬質クロムメッキではメッキ皮膜の優れた物理性質を各々の工業的要求を満たすために適用していますが、装飾用途ではわずか0.5μm以下の薄膜にもかかわらず強固な酸化皮膜を形成し、耐食性、耐変色性、耐候性など外観維持性能に優れていることから長い間広く利用されていました。
ただし最近では6価クロムに対する有害性が指摘され、3価クロムメッキへと代替が進みつつあります。
用途・機能
用途
表面を「ピカピカ」に仕上げたい製品。
ニッケルメッキよりも「耐食性」を向上させたい製品。
自動車部品、機械部品。
機能
装飾性、耐食性、耐摩耗性、硬度、抗菌性
サチライトニッケルクロムメッキ
特徴
装飾目的のメッキ処理で、一般のニッケルメッキ以上の高度な耐食性を要求される場合に施されます。
ニッケルメッキ上にクラックフリークロムを下地とし仕上げにマイクロクラッククロムを施すデュープレックスクロム(2層クロム)を施す処理で、内外の高級乗用車の外装部品に利用されています。
用途・機能
用途
通常の光沢ニッケルメッキ以上に耐食性を要求される場合に施されます。
内外の高級乗用車の外装部品など。
機能
装飾性、耐食性、耐摩耗性、電導性、ボンディング性、ハンダ付け性
アルミ上高耐食ニッケルクロムメッキ
特徴
もっともポピュラーな軽量化素材で、日用品から機能部品、構造材に至るまで、きわめて広範囲に利用されています。
用途や要求に応じて、様々に形状に加工され、種々元素を添加して純アルミにはない特性を付加させた合金も数多く存在します。
ただし、いずれも非常に活性の強い金属であるため、空気中で酸化膜を生じやすく、直接メッキすることはできません。
そのため、十二分な密着性を持たせるためには、ジンケート法あるいはダブルジンケート法と称する亜鉛置換法が不可欠となります。
また、添加元素や加工履歴、熱履歴、あるいは鍛造条件により性質が著しく異なるため、特に熱処理工程において細心の注意が必要になります。
用途・機能
用途
ニッケルメッキよりも「耐食性」を向上させたい製品。
従来以上の軽量化を目指す自動車部品、機械部品。
機能
装飾性、耐食性、耐摩耗性、硬度、抗菌性
樹脂上高耐食ニッケルクロムメッキ
特徴
プラスチックは軽さや加工のしやすさ、柔軟性、設計性などの面から多くの分野で使用されています。
けれども、金属と比較して耐熱性や耐候性に劣りキズがつきやすいなど、金属製品に置き換えるものとしては欠点となってしまう部分もあります。
そこで、おすすめなのが、プラスチックにメッキを施すこと。美しい金属外観を付与できる事はもちろん、プラスチックの欠点を補い機能を向上させることが出来ます。
用途・機能
用途
ニッケルメッキよりも「耐食性」を向上させたい製品。
従来以上の軽量化や機能の付加を目指す自動車部品、機械部品。
機能
装飾性、耐食性、耐摩耗性、硬度、抗菌性