銅メッキ
銅は熱伝導性、電気伝導性が高く、展延性に優れる金属であり、特有の赤みの色調を有しています。
銅メッキは、これらの銅の特性を活かして、鉄鋼や銅合金、亜鉛ダイカスト、プラスチック、セラミックスなどの様々な素材に装飾用、機能用として幅広く利用されています。
装飾目的としては、赤みの色調がそのまま利用されることもありますが、銅は変色しやすいため、最上層メッキよりも下層メッキとして使用される場合が多いです。
特に、硫酸銅メッキの優れた光沢性とレベリング性は、素材のキズを目立たなくする効果が強く、上層に施される各種メッキの仕上りを向上させることができます。
機能目的としては、プリント配線板へのメッキが代表的であり、高い電気伝導性と展延性が電子回路の性能と信頼性に寄与しています。
銅メッキ浴には目的に応じ様々な添加剤が加えられますが、一般に、添加剤を加えない場合は低硬度で高延性の皮膜となります。
逆に、外観向上を目的として添加剤を加えた場合、添加剤量の増加に伴い高硬度、低延性となる傾向があります。
硫酸銅メッキ(酸性浴)
硫酸銅浴は、建浴コストが安く、排水処理性が良いことから、プラスチックからプリント配線板まで広く利用されています。
特徴
- 光沢、レベリング:非常に良好
- 均一電着性:ハイスロー浴は良好
- 電流効率:ほぼ100%
- 素地選択性:卑金属不可
- 浴管理:容易
- 排水処理性:良好
- 建浴コスト:安価
- 主な用途:樹脂メッキ、電鋳・スルーホールメッキ
用途・機能
用途
高硫酸銅・低硫酸の一般浴は主に装飾用、電鋳用として使用されていますが、プリント配線板のビアフィリングメッキ用としても使用されるようになってきています。
低硫酸銅・高硫酸のハイスロー浴は、均一電着性に優れることから、プリント配線板のスルーホールメッキ用として使用されています。
品質維持のための取組み
浴の作り方予備槽で浴容量の約6割の純水に硫酸銅を溶解したのち、硫酸を少量ずつ攪拌しながら加えます。 |
浴の維持硫酸金同濃度が低下すると均一電着性は向上するが、高電流部にヤケが発生し易くなる。 |
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ホウフッ化銅メッキ(酸性浴)
ホウフッ化銅浴は高電流を流せることが特徴で、高速メッキ用として使用されてきましたが、浴が高価であることや排水処理性が悪いことなどから、最近ではあまり使用されなくなっています。
特徴
- 光沢、レベリング:悪い
- 均一電着性:普通
- 電流効率:ほぼ100%
- 素地選択性:卑金属不可
- 浴管理:容易
- 排水処理性:フッ化物が難点
- 建浴コスト:高価
- 主な用途:電鋳高速メッキ
シアン化銅メッキ(アルカリ性浴)
シアン化銅浴は、鉄や亜鉛などの卑金属に密着の良いメッキを得るために不可欠とされています。
また、鉄鋼の浸炭防止としても使用されています。
特徴
- 光沢、レベリング:悪い
- 均一電着性:良好
- 電流効率:浴組成で異なる
- 素地選択性:ほとんどなし
- 浴管理:やや難しい
- 排水処理性:シアンの毒性が問題
- 建浴コスト:普通
- 主な用途:ストライクメッキ・浸炭防止
用途・機能
用途
シアン化銅浴は、シアン化第一銅とシアン化ナトリウム(もしくはカリウム)からなり、必要に応じ光沢剤や他の添加剤が加えられます。
銅の含有量により、低濃度浴、中濃度浴、高濃度浴に大別できます。
低濃度浴は主にストライクメッキに使用されます。
高濃度浴は高速メッキが可能ですが、持ち出しによるロスが大きいため中濃度浴が多く使用されています。
水酸化カリウムは、浴の電導性と電流効率、光沢性と光沢範囲を改善する目的で添加されます。
品質維持のための取組み
浴の作り方予備槽で浴容量の約6割の純水にシアン化ナトリウムを溶解させ、純水でペースト状にしたシアン化銅を少しずつ攪拌しながら加え溶解させます。 |
浴の維持管理項目は、シアン化銅、遊離シアン化ナトリウムで、いずれも分析管理が可能です。 |
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ピロリン酸銅(アルカリ性浴)
ピロリン酸銅浴は弱アルカリ性で、強酸と強アルカリに侵されるような素材にも使用できる利点がりますが、鉄や亜鉛に対してはシアン化銅浴ほどの良好な密着が得られないことから、シアン化銅浴に置き換わるまでには至っていません。
メッキ浴の主成分は、ピロリン酸銅とピロリン酸カリウムですが、ピロリン酸銅は水に不溶性であるため、ピロリン酸カリウムと錯塩を形成させて可溶化します。
この他、少量のアンモニア水を光沢範囲を広げる目的で添加します。
特徴
- 光沢、レベリング:良好
- 均一電着性:良好
- 電流効率:浴老化により低下
- 素地選択性:少し有り
- 浴管理:やや難しい
- 排水処理性:キレート剤が難点
- 建浴コスト:高価
- 主な用途:ストライクメッキ・スルーホールメッキ
品質維持のための取組み
浴の作り方予備槽に浴容量の約6割の純水を加え50~60℃に加温します。 |
浴の維持管理項目は銅イオン濃度、P比(P207/Cu)、アンモニア濃度、浴pH、オルソリン酸濃度です。 |
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